噂のひとり歩き

「この前の飲み会で大暴れしたんだって?」
違う部署の人にそう訊かれた。
まあ、たしかにぐでんぐでんに酔っぱらってて大声張り上げていたんだから、大暴れしていたには違いないので僕は「はい」と答えた。
でも、そのあとに「お前の気持ちよくわかるよ、本当同情するよ」と言われたのでよく真意がつかめなかった。
どういうことですか?と僕が聞くと
その人は話し始めた。
「お前飲み会の席で課長と喧嘩したらしいじゃん。俺もあの人のこと我慢できなかったから、前に大喧嘩してさ、2月ぐらい一言も口をきかないときがあったんだよ。そりゃそうだよな、あのおっさんなんだから」

どこでどういうふうにそうなったのか全然わからなかった。たしかに大暴れしたけど、それはたんにその場を盛り上げただけであって、上司に喧嘩をふっかけたことなんてなかった。かなり酔っ払っていたけど、きちんと記憶に残っているので間違いなかった。あの場はとても賑やかで楽しい飲み会だった。
「まあ、あの人のもとで仕事するのはきついやろうけど、頑張れよ!」
と僕のことを励ましてその人は去って行った。

噂って本当にどこでどう曲解されるかわからないものだと強く思った午後のひとときでした。