ある深夜の出来事

「カレーが食べたい!!」
先輩は子供が駄々をこねるように叫んだ。
終電をとっくに過ぎた時間帯。いくら大阪の繁華街でもこの時間に開いているカレー屋なんてあるはずがない(あるかもしれないけど、探すのが大変だ)。
「おい、俺を旨いカレー屋に連れて行け!」
先輩は完全に酔っている。
ついさっきまで会社の上司4人と飲んでいた僕らは酔いさましに御堂筋をふらふらと歩いていたのだ。
「もうお腹いっぱいですよー」と遠慮気味に僕は言った。
酒に弱い僕はきまって飲みの席で食べるのとお酌の役に徹する。
「ったくお前はどこまでノリが悪いんや!!ほら!『○○さん(僕が淡い好意を抱いている事務員さん)大好きだあ!!!』って大きな声で叫んでみろー!!」
まったく訳がわからない。
が、先輩を少し驚かせてやろうと思い、本当に叫んでみる。
慌てふためく先輩の姿がおもしろい。

そんなくだらないやり取りをしていたら、すき屋が目に飛び込んできた。
「あ、あそこでええや。」
先輩はもう何でもよかったらしく、僕らはそこでカレーを食べた。
蒸し暑い夜の出来事だった。