あの日はもう二度と来ない

あの夏、いちばん静かな海。 [DVD]

あの夏、いちばん静かな海。 [DVD]

うん、すごく良かった。主人公とその恋人が聾唖ということもあって、この映画はとても静かに物語が進んでいく。過激な暴力シーンもなければ、過剰な演出もなく、サーフィンに熱中する男とそれを見守る女性の姿が淡々と映し出されている。それだけなのに観終わったあと、とても切ない気分になった。
タイトルのとおり、これは「あの夏」に起こった出来事の話で、僕は「あの」っていう部分に惹かれる。


部屋を整理していたらインスタントカメラが出てきた。カメラ屋さんに持って行って現像してもらった。写真には大学4年の冬に「裏文化祭」と称して仲間と開いた、ひとり一芸の飲み会の模様が写されていた。
机に散乱するお酒と食いかけの食べ物、ギターを弾くキアブ、煙草を吸うS君、出来上がって頬を赤らめているSつき君、アングラのことを熱弁する自分の姿。1年くらい前のものなのに、もう何年も昔のことのように思えて、懐かしさがこみあげてきた。
これからの僕の人生にも、あそこにいっしょにいた仲間の人生にも、あのときあの場所で起こった出来事はもう二度と来ないんだと思うと、急に人生の切実さが迫ってきてたような気がした。